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環境対策コラム

工場のEMSとは? 既存設備を活かすエネルギーマネジメントの進め方

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工場の省エネ対策と、効率的なエネルギー管理は、いま多くの製造業にとって重要な経営テーマになっています。2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、何から手をつければよいか悩む声も増えています。

エネルギーコストの高止まりや変動リスクが続くなか、複数メーカーの設備が混在する工場では、「設備を全部入れ替えないと省エネは進まないのか」「大きな投資をせずに省エネできる方法はないのか」という悩みが共通しています。

この記事では、こうした課題に対する有力な選択肢である「EMS(エネルギーマネジメントシステム)」について、その基本から既存設備を活かした導入の進め方までを、パナソニック環境エンジニアリングが省エネ支援で培ってきた知見をもとに、できるだけわかりやすく解説します。生産効率を落とさずに、コスト削減とカーボンニュートラル対策を両立したい方に向けた内容です。

※本記事に登場する効果の説明は、効果を保証するものではありません。実際の効果は工場ごとの設備構成や状況によって変わるため、診断やシミュレーションで確認することをおすすめします。

1. 工場の省エネ・エネルギー管理が抱える課題

2050年カーボンニュートラルの実現、そして2030年度の温室効果ガス削減目標に向けて、工場の省エネ対策はこれまで以上に重要な課題になっています。経営層からはカーボンニュートラル対策とコスト削減の両方を求められる一方、生産現場では生産や品質への影響を避けなければなりません。その板挟みのなかで「生産に影響が出ない範囲で環境対策とコスト削減を両立する」という難しいテーマに向き合っているのが、生産技術部門や施設管理部門、保守・メンテナンス部門の皆さんです。

1-1. 周辺設備(ユーティリティ)のエネルギー消費が大きい

多くの工場では、生産ラインそのものだけでなく、空調・冷凍機・コンプレッサー・ポンプといった周辺設備(ユーティリティ設備)が、エネルギー使用量に大きく影響します。特に、クリーンな環境や高度な温湿度管理が求められる現場では、こうした設備が常に動き続けるため、その割合はさらに大きくなります。

生産ライン自体の省エネは生産に影響が出るリスクが高いため、まずはこうした周辺設備をいかに効率よく動かすかが、コスト削減のカギを握ります。

1-2. 現場で起きやすい「3つの壁」

壁1:特定の担当者に設備の知識・経験が集約している(保守の属人化)

長く工場を運営していると、特定の担当者しか設備の状態や運転のクセを把握していない「属人化」が進みがちです。人手不足のなかで定期点検が後回しになり、その担当者が不在になると誰も対応できず、突発的な故障による生産停止のリスクを抱えることにもつながります。

壁2:設備ごとにメーカー・協力会社がバラバラで一元管理が難しい(マルチベンダー化)

設備は少しずつ増設・更新されます。「空調はA社、冷凍機はB社、コンプレッサーはC社」というように、メーカーも協力会社も設備ごとにバラバラになりがちです。管理の窓口を集約できていないうえ、エネルギー管理システム(EMS)の種類によっては自社メーカーの機器を中心に設計されている場合もあり、通信のしくみが違う他社製の設備までまとめて管理・制御するのは簡単ではありません。「見える化」はできても、設備をまたいだ最適化までは届かない、というケースです。

「既存設備を活かしたまま省エネをしたい。でも、他社製の設備までしっかり対応してくれる協力会社がいない」——これは、パートナー選びでよく聞かれる課題です。

壁3:集めたデータを次の一手につなげにくい/効果が測りにくい

データが集まっていても、「どこをどう調整すれば省エネになるのか」という具体的な行動に結びつかず、EMSの機能をうまく活用できず、記録するだけで終わってしまうことがあります。また、外気温や生産量の変動があるため、対策の効果なのか、単に生産量が少なかっただけなのかが分かりにくいという難しさもあります。

2. 工場のエネルギーマネジメントシステム(FEMS)とは

EMSとは、工場やビルなどのエネルギーの使用状況を計測・収集し、分析や制御によってエネルギー利用の最適化を図るしくみの総称です。特に工場向けのものはFEMS(Factory Energy Management System)と呼ばれることもあります。

EMSというと「電力の見える化システム」を思い浮かべる方が多いかもしれませんが、その本来の役割は、集めたデータをもとに設備を「制御」し、エネルギーの使い方を最適化することにあります。見える化はEMSの土台ではあるものの、それはあくまで出発点です。これからのEMSに求められるのは、見える化で得たデータを分析してムダを特定し、さらに設備の運転を自動で制御するところまで踏み込むこと。つまり、「見る」だけでなく「動かす」ところまでを担うのが、成果につながるEMSです。

1章で挙げた「3つの壁」——保守の属人化、既存設備の構成による制約、データ活用の難しさ——は、見える化止まりの運用では越えられません。メーカーの異なる設備を含めて工場全体を見渡し、生産の状況に合わせて設備を連携制御する。そうしたEMSのあり方を、次章から具体的に見ていきます。

3. EMSでできること:見える化・分析・制御

工場のEMSが担う機能は、大きく「見える化」「分析」「制御」の3段階に整理できます。

3-1. 見える化:エネルギーの使い方をデータで捉える

電力・温度・湿度・流量などを計測し、どの設備が、いつ、どれだけエネルギーを使っているかをデータで捉えます。工場全体の使用量を眺めるだけでなく、生産量あたりのエネルギー使用量(原単位)で管理することで、「生産が増えたから使用量が増えた」のか「ムダが増えた」のかを切り分けられるようになります。空調などの設備を遠隔で監視・管理できるようにすれば、設備の稼働状況が正常かどうかを誰でも把握でき、管理の属人化を和らげることにもつながります。

3-2. 分析:ムダを特定し、打ち手につなげる

集めたデータをもとに、待機時のムダな稼働や、設定の見直しで改善できる部分を洗い出します。外気温や生産量の変動を考慮して分析することで「対策の効果」と「条件の変化」を区別でき、効果検証の精度も上がります。投資をかけずに運用の見直しだけで改善できる項目が見つかることも少なくありません。

3-3. 制御:生産設備とユーティリティ設備を連携させて動かす

EMSの真価が発揮されるのが、この制御の段階です。なかでも効果が大きいのが、生産設備とユーティリティ設備(空調・冷凍機・ポンプなど)の連携制御です。

たとえば生産設備が待機状態のときには、生産設備とユーティリティ設備の両方を同時に省エネ運転に切り替えることで、消費エネルギーを抑えます。ポイントは、品質を担保しながらエネルギーを最小化するところです。設備を停止させず低出力で運用するため、短い時間で生産できる状態に戻せ、数十分単位の切り替えや生産調整による待機にも対応できます。「生産条件に余裕を持たせて過剰に設備を稼働させる」のではなく、「生産に支障が出ない範囲でムダを減らす」という発想です。

また、こうした制御は、設備を丸ごと入れ替える「リプレース」ではなく、いまある設備に制御のしくみを“継ぎ足す”ことで実現できます。これまで熟練の担当者が経験で行っていたような細かな運転調整を、システムが代わりに担うイメージです。既存資産を有効活用したい(レトロフィット)というニーズに応えながら、属人的な運転調整から脱却できます。

4. 既存設備を活かすEMS導入の4ステップ

設備を全部更新するのは予算的に難しい——その制約のなかで改善の選択肢を探している方にとって、初期投資の重さは大きな気がかりです。パナソニック環境エンジニアリングの省エネ支援は、いきなり全社展開するのではなく、段階を踏んで進められる点が特長です。

ステップ1:省エネ診断で現状と改善テーマを見極める

まず、工場の現状を把握し、どこに省エネの余地があるかを診断します。簡易診断から詳細診断まで段階があり、これまで蓄積された多くのノウハウから、その工場に合った省エネ改善策をご提案します。

ステップ2:エネルギーの「見える化」

次に、電力・温度・湿度・流量などを計測し、エネルギーの使い方を「見える化」します。全体の使用量を見るだけでなく、稼働状況や原単位での傾向分析などを行い、集めたデータを管理・分析することで、次の改善につなげていきます。どこを見える化すれば原単位管理や制御がしやすくなるかというノウハウをもとに、計測すべきポイントをご提案できるのも、パナソニック環境エンジニアリングの強みです。

ステップ3:省エネソリューション・シミュレーション

見える化で見えてきた課題に対して、省エネソリューション技術やシミュレーション技術を用いて、改善策を検討します。導入前に効果を試算できるため、投資に見合う効果が得られるかを具体的に判断できます。

ステップ4:工場まるごとの省エネ制御を実施

最後のステップが、生産設備とユーティリティ設備の連携制御による「工場まるごとの省エネ」の実施です。効果の大きい設備から段階的に対象を広げていくことで、無理のない形で工場全体へと省エネを広げていきます。

💡 まず何から始めればいい?
「自社の工場にどれくらい省エネの余地があるか分からない」という場合は、現状把握のための省エネ診断から始めるのがおすすめです。

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5. EMSが活きる場面・対象設備

EMSによる連携制御は、工場の生産工程のなかでも、特にエネルギーを多く使う設備や、待機時間が発生しやすい工程で本領を発揮します。生産設備の稼働状況に合わせてユーティリティ設備の運転を調整できる工程であれば、業種を問わず応用できる可能性があります。

5-1. 塗装ラインでの活用

たとえば塗装ラインでは、前処理・洗浄工程のポンプや、乾燥炉などがエネルギーを多く消費します。ワーク(加工対象物)を検知する信号をもとにポンプや乾燥炉の運転を制御し、ムダな稼働を減らします。待機時には省エネモードへ移し、生産が再開すれば短時間で元の状態に戻す——こうした制御が、連携制御の代表的な使い方のひとつです。塗装室のクリーン度を工程ごとに適切に保つことと組み合わせれば、品質を担保しながらランニングコストを抑えることにつながります。

5-2. 空調・ユーティリティ設備での活用

クリーン環境の維持や温湿度管理が必要な工場では、空調やユーティリティ設備のエネルギー消費が大きくなりがちです。こうした設備も、生産の状況に合わせて運転を調整することで、品質に必要な環境は保ちながら、ムダな稼働を抑えることが期待できます。たとえば、生産状況に応じた給排気ファンやチラー(冷水を供給する機器)の運転調整、洗浄工程のポンプの運転調整などが、検討できる余地のある領域です。

5-3. 厳密な温湿度管理が求められる施設(ドライルームなど)での実績

温湿度を厳密に保つ必要のあるドライルームは、空調が常に稼働し続けるため、エネルギー消費がとくに大きくなる施設です。パナソニック環境エンジニアリングでは、パナソニックグループ工場のドライルームに、AIを活用して空調を予測制御する特殊空調向けのEMSを導入し、空調エネルギーについて35%の省エネ効果が得られた事例があります。この取り組みは、2019年に省エネ大賞を受賞しています。

厳しい環境条件を保ちながらでも、データにもとづく予測制御によって大きな省エネ効果を得られる——EMSの可能性を示す一例です。

※上記は特定の導入事例における実績であり、効果を保証するものではありません。どの工程にどう適用できるか、どの程度の効果が見込めるかは、業種や設備の構成によって変わります。具体的には診断のなかで検討します。

6. 導入効果を確認するための診断・評価の進め方

EMSの効果は、工場の規模や設備構成、生産状況によって大きく変わります。そのため、あらかじめ一律の数値をお約束することはできません。だからこそ大切なのが、自社の工場で「どのくらいの効果が見込めるのか」を、思い込みではなく実際のデータで確認することです。

ここでは、効果を見極めるための一般的な進め方をご紹介します。

1. 現状の把握(見える化)

まず、工場全体のエネルギーの使い方と各設備の状態を把握します。どの設備が、いつ、どれだけエネルギーを使っているかをデータで捉えることで、改善の余地が見えてきます。

2. ムダの洗い出しと改善ポイントの特定

計測したデータをもとに、待機時のムダな稼働や、ロスの多い運用などを洗い出します。投資をかけずに運用の見直しだけで改善できる項目が見つかることもあります。

3. 効果の試算(シミュレーション)

改善ポイントに対して、連携制御を行った場合にどの程度の効果が見込めるかを、工場の条件に合わせて試算します。この段階で、投資に見合う効果が得られるかを具体的に検討できます。

4. 導入・検証

効果が見込める範囲から導入し、実際の運転データで効果を検証します。検証結果をふまえて対象を広げていくことで、無理のない形で省エネを進められます。

このように、EMSは「まず効果を確認してから進める」というアプローチが取りやすい手法です。机上の理論だけでなく、現地調査や診断を通じて効果を確かめながら導入を判断できる点は、パートナーを選ぶうえでの安心材料になります。

※実際の効果は工場ごとの条件によって異なります。具体的な効果は、現地調査や診断、シミュレーションを通じてご確認ください。

まずは自社工場の「省エネの余地」を診断してみませんか?

EMSの効果は工場ごとに変わるため、実際のデータで確認することが第一歩です。現状把握のきっかけとして、工場の無料診断サービスのご案内資料もご用意しています。あわせてご活用ください。

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7. よくある質問(FAQ)

導入を検討される際によくいただく質問にお答えします。

Q1. 他社製の設備や、すでにある管理システムとも連携できますか?

既存設備の構成や通信仕様を確認したうえで、メーカーの異なる設備を含めた連携の可能性を検討できます。すでに工場で使っている設備や管理の仕組みを活かす形での導入を想定しているため、まずは現状の設備構成をお聞かせいただくのがスムーズです。なお、具体的な連携可否は設備の種類や通信のしくみによって変わるため、現地調査や実際の実証のなかで個別に確認します。

Q2. 既存設備を活かしたまま、後付けで省エネを進められますか?

はい。計測機器の仕様が適合していれば、設備を全部更新するのではなく、いまある設備に制御のしくみを加えることで省エネを進められます。全面更新の予算が取りにくい場合でも、効果の大きい設備から段階的に始められます。

Q3. どんな業種の工場で使えますか?

特定の業種に限らず、生産設備と周辺設備(ユーティリティ設備)を連携させてムダを減らせる工場であれば、幅広く応用できます。どの工程にどう適用できるかは設備の構成によって変わるため、診断のなかで検討します。

Q4. 保守・点検が属人化していて不安です。あわせて相談できますか?

パナソニック環境エンジニアリングでは、提案から設計・施工、その後のメンテナンスまでを一貫してサポートできる体制があります。設備ごとにバラバラだった管理の窓口をまとめたい、点検や保守も含めて相談したい、というご要望にも対応します。

Q5. 効果はどのくらい見込めますか?

効果は工場の規模・設備構成・生産状況によって大きく変わるため、一律の数値はお伝えできません。だからこそ、まずは現状把握のための診断を行い、お客様の工場に合わせて効果を試算することをおすすめしています。

8. まとめ:まずは自社工場の「省エネの余地」を知ることから

カーボンニュートラルに向けて、工場に求められる省エネの水準は年々高まっています。複数メーカーの設備が混在し、保守も属人化しがちな複雑な環境でも、工場全体を見渡し、設備どうしの連携を考えた管理・制御を行うことが、これからのエネルギー管理には欠かせません。

EMSは、見える化・分析にとどまらず、生産設備とユーティリティ設備の連携制御まで踏み込むことで、いまある設備を活かしながら工場全体の省エネを進められる仕組みです。設備の過剰運転を減らすという発想のもと、既存資産の有効活用(レトロフィット)と、メーカーの異なる設備を含めた連携の検討を、計画から保守まで一貫して相談できるパートナーをお探しなら、検討する価値があります。

最初の一歩は、「自社の工場にどれくらい省エネの余地が残っているか」を客観的に把握することです。

工場の省エネ・エネルギー管理について相談する

パナソニック環境エンジニアリングでは、工場の現状把握のための省エネ診断から、見える化、エネルギー管理などの省エネ対策の提案・設計・施工・保守までを一貫してサポートしています。

  • 最小限の工事で既存設備を活かした省エネを進めたい
  • 複数メーカーの設備を含めた管理・連携を検討したい
  • 保守・点検の属人化を解消したい
  • カーボンニュートラルに向けて、現場で着手できる具体策を知りたい

このようなお考えがあれば、まずはお気軽にお問い合わせください。

工場の省エネ・カーボンニュートラルの資料をご用意しています

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「自社の工場にどれくらい省エネの余地があるか」を知るための無料診断サービス、エネルギーの見える化支援、工場のカーボンニュートラル対策の考え方をまとめた資料です。あわせてご活用ください。

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