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環境対策コラム

GMPの清浄度グレードとは?無菌医薬品製造でポイントとなる空調・気流・差圧

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GMP(Good Manufacturing Practice)とは、医薬品の品質を一定に保つために定められた製造管理・品質管理の基準です。無菌医薬品の製造では、空調は単なる温度調整設備ではありません。清浄な空気を供給し、区域間の気流と差圧を管理して、製品への汚染を防ぐための重要な設備です。GMP対応の空調設計では、設備仕様を決める前に、どの区域をどの清浄度で管理し、どの状態を適格性評価で確認するかを決める必要があります。

この記事では、GMP省令が空調に求めること、清浄度グレードA〜Dの意味、気流・室間差圧の考え方と代表値、空調設備のDQ・IQ・OQ・PQ(設計時・据付時・運転時・性能適格性評価)、既存建屋を改修する場合の変更管理まで、公的文書に基づいて整理します。

本記事には略語が多く登場するため、主な略語を先に一覧で整理します。

略語 正式名称・意味
GMP Good Manufacturing Practice。医薬品の製造管理・品質管理の基準
DQ Design Qualification(設計時適格性評価)
IQ Installation Qualification(据付時適格性評価)
OQ Operational Qualification(運転時適格性評価)
PQ Performance Qualification(性能適格性評価)
ISOクラス ISO 14644-1が定める、空気中の粒子濃度による清浄度の分類
PIC/S 医薬品査察協定及び医薬品査察共同スキーム。GMP基準の国際整合を図る枠組み
RABS Restricted Access Barrier System(アクセス制限バリアシステム)
HEPAフィルター High Efficiency Particulate Air Filter。空気中の微粒子を高効率で捕集するフィルター

1. GMPは空調に何を求めているのか

医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(以下「GMP省令」という)は、空調機のメーカーや型式を指定するのではなく、製造環境として達成すべき状態を定めています。医薬品製造全般ではGMP省令第8条の2で交叉汚染の防止を求め、無菌医薬品の製造所についてはGMP省令第23条で、製品の種類・剤形・製造工程に応じて清浄度を維持できる構造設備を求めています。

さらにGMP省令第23条第1項第3号ハでは、無菌操作を行う区域に、フィルター処理した清浄な空気を供給し、適切な差圧管理を行える構造設備を求めています。つまり空調設計の出発点は「どの空調機を入れるか」ではなく、「どの区域で、どの清浄度・気流・差圧を維持するか」です。

1-1. GMP省令とガイドラインの関係:何を基準にすればよいか

結論からいうと、日本で遵守する法令上の基準はGMP省令です。実務では、2021年4月28日のGMP省令施行通知で省令の具体的な運用・解釈とバリデーション指針を確認し、無菌操作の具体的な環境管理では平成23年の国内指針やPIC/S GMPガイドラインのAnnex 1を参照します。

文書 役割
GMP省令 日本国内で遵守する法令上の基準。無菌医薬品製造所の構造設備、バリデーション、変更管理などの要求を定める
2021年4月28日 GMP省令施行通知 GMP省令の具体的な運用・解釈を示す。現行のバリデーション指針とDQ・IQ・OQ・PQの定義を収載する
平成23年国内指針/PIC/S GMP Annex 1 無菌操作、清浄区域、気流・差圧などの具体的な設計・管理を検討する際の実務上の参照資料

PIC/S GMPガイドラインはGMP調査でも参照されます。一方、2012年の厚生労働省事務連絡Q14は、PIC/Sと異なる手法でも、同等以上の品質を達成できる妥当な根拠があれば採用できるとしています。したがって、PIC/Sに書かれた個々の方法を機械的に当てはめることが目的ではありません。GMP省令が求める品質保証を、根拠を説明できる方法で実現することが本質です。

本記事では、法令上の要求はGMP省令と2021年施行通知に基づいて説明し、清浄区域の具体的な設計・管理は平成23年の国内指針を中心に補足します。

2. 清浄度グレードA〜Dとは:無菌医薬品の製造区域を清浄度で管理する区分

清浄度グレードA〜Dは、GMP対象施設全体の「格付け」ではありません。無菌医薬品の製造区域で、製品への汚染リスクに応じて清浄度を管理するための区分です。平成23年の国内指針は、主に注射剤の無菌操作法による製造を対象とし、その考え方を点眼剤など他の無菌医薬品にも適用できるとしています。

グレード 区域の役割(概略)
A 無菌製品・容器・栓などが環境に曝露される重要作業を行う局所区域。無菌充填、無菌接続などを行う
B 一般的な無菌室でグレードAを直接支える周辺区域
C・D A・Bより汚染リスクが低い工程や支援作業を行う区域。工程の内容に応じて必要な清浄度を設定する

平成23年の国内指針では、A〜Dの各グレードについて、浮遊微粒子数を「非作業時」と「作業時」に分けて管理します。つまりグレード設定は名称を決めるだけではなく、区域ごとの環境管理基準を定める作業です。設計図書、バリデーション計画、SOPで同じグレードと判定基準を使い、設計・適格性評価・日常監視をつなげます。

2-1. グレードは工程の汚染リスクに合わせて設定する

設定の基準は、その区域で何をするかです。無菌状態の製品や接液面が環境に曝露される重要作業ほど、高い清浄度で管理する必要があります。製造業者等は、製造操作と汚染リスクから区域の清浄度を設定し、その根拠を文書化します。

2-2. 「グレード」と「ISOクラス」は同じものではない

GMPのグレードA〜Dは、無菌医薬品の製造区域を用途と汚染リスクに応じて管理するための区分です。一方、ISO 14644-1のISOクラスは、空気中の粒子濃度で清浄度を分類する国際規格です。ISOクラスの数値だけからGMPグレードを決めることはできません。設計資料では「GMPグレード」と「ISOクラス」を分けて記載すると、要求条件の混同を防げます。

3. 空調設計で管理すべき項目:清浄度・気流・室間差圧

グレードを設定したら、空調設備でその環境を維持できるように設計します。平成23年の国内指針は、空調管理の基本要素として、温度、相対湿度、風量、換気回数、一方向気流、室間差圧、HEPAフィルターの完全性、浮遊微粒子数、微生物などを挙げています。本記事では、その中でも空調設計に直結する清浄度・気流・室間差圧を中心に説明します。

3-1. 気流:持ち込ませない、滞留させない、逆流させない

平成23年の国内指針では、重要区域(グレードA)の気流は一方向気流とし、浮遊微粒子を区域外へ速やかに排出できる流速と均一性を持たせるとしています。従来型の開放系クリーンブースやRABSでは、0.45m/s±20%の平均風速が推奨されています。

重要なのは、風速の数値だけを満たすことではありません。設備や作業者の位置によって気流が乱れると、重要作業点を保護できないためです。平成23年の国内指針では、要求する気流が確保されていることを設備設置時のバリデーションで確認する考え方が示されています。

3-2. 室間差圧:区域のあいだで空気が流れる向きを決める

室間差圧は、隣接する区域のあいだで空気が流れる向きを管理するために使います。平成23年の国内指針では、清浄度の高い区域から低い区域へ適切な気流を確保することを基本とし、無菌操作区域とその他の支援区域の間では、扉を閉じた状態で10〜15Paまたはそれ以上の差圧を維持することが望ましいとしています。

差圧は設計時に設定して終わりではありません。製品の無菌性確保に特に重要な差圧は常時モニタリングし、異常時に備えて警報システムを設けることが望ましいと平成23年の国内指針に示されています。扉の開閉やフィルターの状態で差圧は変動するため、監視点と警報条件まで含めて設計します。

3-3. 風速・差圧の代表値:法定値ではなく、国内指針の推奨値

下記は平成23年の国内指針に示される代表値です。GMP省令が全国一律の法定値として定めている数値ではなく、無菌製造施設を設計・評価する際の指針値として扱います。

項目 平成23年国内指針に示される代表値
グレードAの一方向気流(開放系クリーンブース/RABS) 平均風速 0.45m/s ±20%を推奨
無菌操作区域とその他の支援区域の室間差圧 扉を閉じた状態で10〜15Paまたはそれ以上を維持することが望ましい

4. 空調設備の適格性評価とバリデーションはどこまでが対象か

2021年のGMP省令施行通知にあるバリデーション指針は、「作業所の空調処理のための装置又はシステム」をバリデーションで検証する事項として明記しています。したがって、製品品質に影響する空調処理システムはバリデーションの対象です。

ただし、すべての空調設備で同じ試験を行うわけではありません。GMP省令第13条は、新たに医薬品の製造を開始する場合、製品品質に大きな影響を及ぼす変更がある場合、その他必要と認められる場合にバリデーションを求めています。2021年施行通知は、製品品質への影響を踏まえて、製造業者等が検証する事項を特定する考え方を示しています。

空調では、対象区域と製造工程への影響を整理したうえで、清浄度、気流、室間差圧、温湿度、HEPAフィルターの完全性などのうち、何をどこまで確認するかを決めます。

空調設備のバリデーションは、次の順序で整理すると明確です。

  1. 空調設備・システムが製品品質に与える影響を整理する
  2. 検証する項目、範囲、受入基準を決め、根拠を文書化する
  3. DQ・IQ・OQ・PQなどの適格性評価を計画・実施し、結果を文書化する

2021年施行通知では、適格性評価を次の4段階で定義しています。

段階 確認する内容(2021年GMP省令施行通知にもとづく整理)
設計時適格性評価(DQ) 新たに据え付け、または変更しようとする設備・システムの設計が、目的とする用途に適していることを確認し、文書化する
据付時適格性評価(IQ) 新たに据え付け、または変更した設備・システムが、適格性を確認した設計や製造業者等の要求に見合うことを確認し、文書化する
運転時適格性評価(OQ) 新たに据え付け、または変更した設備・システムが、予期した運転範囲で意図したように作動することを確認し、文書化する
性能適格性評価(PQ) 新たに据え付け、または変更した設備・システムが、良好な再現性を保って効果的に機能することを確認し、文書化する

空調設備では、DQでゾーニングや空調方式・設計条件を確認し、IQで設備・計測器が設計どおり据え付けられていることを確認します。OQでは風量・差圧・温湿度などが設定した運転範囲で機能することを確認し、PQでは実際の製造条件のもとで要求する環境を再現性よく維持できることを確認します。

5. 既存建屋を改修する場合のポイント

既存建屋のGMP改修では、①既存設備の制約、②工事中の汚染防止、③GMP上の変更管理の3点を同時に整理します。

1つめは既存設備の制約です。既存の空調系統、天井内スペース、シャフト、電源容量を現地調査で把握し、その条件の中で成立するゾーニングと空調方式を決めます。既存条件を確認せずに清浄区域の計画だけを先行させると、後から設備ルートや容量の見直しが必要になります。

2つめは工事中の汚染防止です。稼働中の製造区域が隣接する場合は、工事区域を分離し、粉じん・気流・差圧の影響を製造区域へ持ち込まない施工計画が必要です。製造を続けながら改修する場合は、仮設区画や搬入経路、停止切替の手順まで工事計画に組み込みます。

3つめはGMP上の変更管理です。GMP省令第14条は、変更を行う前に製品品質と承認事項への影響を評価し、その評価に基づいて変更を承認・実施することを求めています。変更後には、製品品質への影響を再確認し、変更の目的が達成されていることを評価します。

したがって改修時の基本フローは、「変更内容を定義する → 製品品質への影響を事前評価する → 必要な適格性評価・バリデーションを決める → 改修を実施する → 変更後の影響を再確認する」です。改修したから自動的に全項目を再バリデーションするのではなく、GMP省令第13条とGMP省令第14条に基づいて必要な範囲を決めます。

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6. GMPの清浄度・空調に関するよくある質問

Q1. 相談前にどのような情報を整理しておくとよいですか?

対象工程、既存図面、清浄度要求、温湿度条件、改修範囲、稼働中工事の有無など。

Q2. 換気回数に決まった数値はありますか?

GMP省令に全国一律の法定換気回数はありません。ただし平成23年の国内指針では、直接支援区域で30回/時間、グレードCで20回/時間を確保することが望ましいとされています。これらは指針値であり、最終的には設定した清浄度を維持できることを適格性評価で確認します。

Q3. 既存建屋の改修でもバリデーションは必要ですか?

改修しただけで必ず再バリデーションが必要になるわけではありません。まずGMP省令第14条の変更管理として製品品質への影響を評価し、GMP省令第13条に該当する場合は、必要な範囲で再度の適格性評価・バリデーションを実施します。

Q4. 空調設計の段階でQA部門と何を共有しておくべきですか?

少なくとも、①区域ごとのGMPグレードと設定根拠、②清浄度・気流・差圧・温湿度などの設計条件と受入基準、③DQ・IQ・OQ・PQで何を確認するか、④差圧・温湿度などを稼働後にどう監視するか、の4点を共有します。これを設計段階で合意しておくと、設計条件とバリデーション条件の食い違いを防げます。

7. まとめ

  • GMP省令は空調機の型式ではなく、交叉汚染を防ぎ、無菌医薬品の製造区域で必要な清浄度・清浄空気・差圧を維持できる構造設備を求めています。
  • 清浄度グレードA〜DはGMP施設全体の格付けではなく、無菌医薬品の製造区域を汚染リスクに応じて管理するための区分です。
  • 平成23年の国内指針では、グレードAの一方向気流に0.45m/s±20%の平均風速、無菌操作区域と支援区域の室間差圧に10〜15Paまたはそれ以上という代表値が示されています。
  • 日本で遵守する法令上の基準はGMP省令です。2021年施行通知が具体的な運用とバリデーション指針を示し、平成23年国内指針やPIC/S GMP Annex 1は無菌製造の具体的な設計・管理で参照します。
  • 2021年施行通知は空調処理システムをバリデーションの検証事項として明記しています。検証項目と範囲は製品品質への影響に基づいて決めます。
  • 既存建屋の改修はGMP省令第14条の変更管理にかけ、製品品質への影響を事前評価したうえで、必要な適格性評価・バリデーションの範囲を決めます。

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